小さい書房を始めたころ、いくつかの新聞で「大人向け絵本」を刊行する出版社として紹介された。
その記事を見た知人から「最近は介護施設でも絵本読むの流行っているらしいよ」と教えてもらった。
それっきり忘れていたことが数年を経ていまとつながるのは面白い。
ひょんなことから、デイサービスの施設におじゃまする機会を得た。
きっかけは江戸川区の葛西図書館で職員さんと雑談していたとき、
「デイサービスの施設に行って絵本を読むこともある」と聞いたこと。
ぜひ見学させてください、とお願いした。
そして先月末に訪ねたのは葛西図書館から歩いて5分もかからない、日帰りで通所する介護施設。
この日はお年寄り13人を前に
葛西図書館の職員さんが絵本を読んだり、漢字を読みあてるゲームをやったり、歌を歌ったり。
「絵がある本」のほうがお年寄りの興味を得られやすいそうで、
大きいサイズの絵本が活躍しているという。
そういえば、以前、作家の小風さちさんの講演会で、
“本は【朗読】されることでまた別のものになる”という話を聞いたことがある。
「読む」だけでなく、朗読されるのを「音」として聞くとき、またそこに別の価値が生まれるのではないか、というようなお話だったと記憶している。
絵本の朗読は、デイサービスのお年寄りにとって「生の音を聞く」感覚に近いのかもしれない。
図書館職員さんの弾くギターに合わせてお年寄りが大きな声で歌うのを楽器が弾けない私はうらやましく見ていたけれど、
本1冊片手に「生音」を届けられるのも、また朗読の魅力だと気づいた。
考え方が少し広がった気がした。
(東京・江戸川区のデイサービス施設にて。2019年1月31日撮影)