金曜日、朝から所要で銀座に行った。銀座に行くことはほとんどないので、高級そうな店の並びに
「さすが銀座だわ~」などと思いながら歩く。(東京在住25年でも、ですよ)
次までの時間が空いたので、さくっとランチするかときょろきょろしてみたが、
旗をもったツアコンに先導された観光客がいたり、2000円台のランチの看板が目に入ったりで
「高すぎます無理です…」と心の中でつぶやきつつ、
あー私はこのまま銀座を離れてしまうのだわと思ったそのとき。
900円ランチの看板が目に入る。不可抗力。吸い寄せられるようにそのお店、地下1階の日本料理店へ。
夜飲む店風の一般的な内装でこじんまりとしている。
いくつかあるテーブルは満席。で、カウンター席に座る。
大変失礼ながら、銀座で900円ランチということは、空腹を満たすことができれば十分レベルの内容を
想像していたのだけど、ところがどっこい、でございました。
やわらかな物腰の店員さんから
「定食のご飯は、<白米>、<きんぴらごぼうごはん>、<グリンピースごはん>から選べます」
と言われ、「おぉ!」とまず心の叫びを上げる。3種類から選べるなんて、しかもグリンピースご飯なんて
食べたのは子供の時くらいだ。あのしょっぱい感じの緑色の…とこんもり盛られたグリンピースご飯の
お茶わんが頭に浮かんでいたくせに、なぜかきんぴらごぼうごはんを注文してしまい、
「やっぱりグリンピースご飯にしとけばよかった」と後悔(するなよ)しているところに、
またもや店員さんが狭い店内をお盆片手に来て、「お好きな小鉢をお取りください」とにっこり。
お盆の上には10種類くらいの小鉢がぎっしり並んでいて、
菜の花のお浸し、でっかい卵焼き、しらすおろし…とすべて違う種類の「おふろくの味」。

なんだよ銀座、これまで誤解していてごめん。
私は行列のできる店に全くいかないので、銀座特集も、グルメ特集も見ないから、
もしかしたらこういう店、銀座にほかにあるのかもしれないけど。
久しぶりにおいしいおふくろの味を堪能できて幸せ。
たとえしょぼい小鉢がついていたとしても不満はない内容だったのに、
10種類もの小鉢から選べるとはぜいたく!
しかもお客さんが帰るとき、70代くらいの店主が、
「ありがとうございましたー」と、腹の底から出すその声が、大きくて太い。劇団員みたい。
フロアにいる別の店員さんも「ありがとうございましたー」と続き、
厨房からまで壁越しに「ありがとうございましたー」の声が聞こえる。
どの客が出ていくときにも、一様にそうだった。
しつこいようですが、900ランチで、銀座なんです。
それでこれだけの食事をお客さんに提供するお店の心意気に打たれました。
ああ、でも銀座に来ることがほとんどない私は、常連さんになれないのが残念。
お店の名前は青山(せいざん)。ワインと懐石、日本料理の店だそうです。
そして私は久しぶりにグリンピースご飯を作ってみようかと思っているのでした。